今、ホウガンノキ(Couroupita guianensis)が花の季節をむかえています。ユニークな名を持つこの植物は、南アメリカ北部原産でサガリバナ科になります。高さ15〜35mになる高木で一般的には常緑ですが、環境条件により落葉します。花は60〜90cmの花序につき、直径10cmほどの紫紅色をした美しい花を咲かせ、芳香があります。花後には直径15〜20cmの果実をつけ、砲丸のようにみえることから、この和名があります。原産地では果実を容器などに利用し、油分に富む種子は食用とします。
当園にはジャングルゾーンとアナナス室に各1本、計2本が植栽されており、ともに開花するサイズに育ち、毎年、花を咲かせています。現地では小動物が受粉作業を担いますが、温室の中には花粉の媒介者がいないため、何もしなければ、実はなりません。そのため、人工授粉を行う必要があり、花の季節には毎日、職員がホウガンノキにはしごをかけ、地上3〜5mに咲く花を目指します。花が咲いていていたとしても、花粉がでているとは限りません。その日の温度や湿度により、花粉のでる時間帯が大きく左右されるからです。花粉がでていなければ人工授粉は行えず、交配できるベストな状態に遭遇するためには、少なくとも1日に3〜5回、はしごののぼりおりを繰り返すことになります。よい香りが漂い始めれば、花粉のでているサインです。花の見頃は、6月中旬までになりますので、是非、美しい花をお楽しみください。
5月中旬から行ってきた人工交配の成果は、真夏頃に砲丸に似た果実となって現れます(現在、ご覧いただいている果実は、昨年、結実したもの)。今年はいくつの果実が実ることでしょう。